昭和40年代社内旅行の定番は宴会後の8mmフィルム鑑賞であった。この事件は技術課旅行で起きたものである。
旅行を週末に控え「今回は新しいフィルムを持っていこうよ」との要望があり「F社やK社に顔が利く三上さんに頼んでもらおう」ということで私が重責を負うことになる。旅行は土曜、猶予は4日。早速K社の営業に連絡「その手のフィルムは2週間位ないと難しい」と断られてしまう。そこでF社の営業に電話すると即座にOKとの返事。さすがF社は顧客サービスが違うと大いに感心。土曜日朝、真新しいフィルムを受け取り意気揚々と出発。
宴会も終わり幹事から通達「これから恒例の映写会をするので○号室に集まれ」全員ドテラ姿で部屋に集まり壁に向かって座ると映写技師の課長より一言「今日は新作を用意したので静粛に見るように」電気が消されいよいよ映写会の始まり。全員固唾をのんでスクリーンを睨むこと数分、観客席から「課長何しているのだ」課長曰く「今日は新作だから慌てるな」…1分経過。課長の声「何か変だな、電気を点けてくれ」電気を点けフィルムを点検「オイ!何だ、これはこれから写す生フィルムじゃあないか。誰だ、こんなフィルムを借りたのは」。借主の私はソソクサと部屋を出る。
「生フィルム事件」として40年以上経過した今でも関係者の記憶に深く刻まれているのである。日本語は難しい!
執筆:三上 敦敏
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