薄曇りの朝6時に東武線新古河駅に後町さんと田中は待ち合わせて、その近くの群馬埼玉茨城3県の県境にその由来名を持つ三国橋のたもと、渡良瀬川の本流に向かった。
そこは20年位前に田中が大ベラや鯉を釣り上げた思い出の場所である。
かねてよりどこかの川で本流釣りをしたいとの後町さんの声を耳にしていた田中は密かにその機会を伺っていた。孫たちにも開放された連休明けの軽い雨のあと折よく晴れてくれた6日をその日に選んだ。
急遽の計画であったため、今回は二人だけの釣り行きとなったが、これまでの釣りとは全く雰囲気の異なったまさに大自然の中で、いろんな種類の魚たちが私たちを歓迎してくれるという恩恵にあずかることになった。その様子を私たち釣り同好会仲間にも、またひょっとして、そんなことならまた少年時代を思い出して釣りを再開してみようかという方々のためにも報告しておきたいと思います。
釣り場として選んだのは渡良瀬川の水深の測定場所そばであり(注1)、昔は川岸近くまで開けていて岸辺の法面のコンクリー傾斜に釣台をセットして釣ったものであるが、今では付近はうっそうと草木が茂っており近づけない雰囲気であった。湾処になった部分の一部に草を切り分けた小さな道の先にはネットで護岸された部分があり、二人には絶好の釣り場と見た。この場所に覚悟を決めて、釣台をセットした。
釣り方は、竿21~22尺、外つけ通しオモリ2.5~3号、底釣り、浮子または穂先脈釣り、喰わせ餌はグルテンまたは夏ダンゴで臨んだ。(注2)
二人合計の釣果は、ヘラ7枚、ワタカ3匹、鯉1匹、なまず1匹でした。
釣り上げ引き寄せるときに、ニゴイではないかと思った田中であるが、さすがに川魚に詳しい後町さんはワタカであると。帰って調べてみると、ワタカは最初琵琶湖で棲息し、その後全国の河川にも見られるようになったが2013年には絶滅危惧IA類に指定されたとのことである。釣り上げたうちの1匹は体調30cmもあり、おなかには卵を孕んでいた。
そんな貴重な魚なら大事に産卵してできるだけたくさんの稚魚に育ってほしいとも思う。ときおり川漁らしい小舟がモーターで走ってゆくがその舟尻の波立ちには1m級のレンギョ(ハクレン)がたくさん飛び跳ね追っている。こんな魚がいるなかでの生存はさぞかしであろうと思われた。
ナマズの方はひげが黒く太く長く、私が最近生やしだしたチョビヒゲよりもずっと立派で威厳がある。後町さんによると、これは外来種とのこと。これも調べてみると、アメリカナマズであると。人間世界も人類の避難大移動などあるが、自然界もただならぬようである。
外道のことばかり述べたが、肝心のヘラ7枚は7寸から1尺のきれいな背高もあり、おなかのあたりが少し赤らんで見事な色の立派な魚姿であった。本流釣りは久しぶりだという後町さんは大満足してくれた。付近の木からはホーホケキョ、チョットコイ、空にはトンビがピーヒョロロと鳥の鳴き声が聞こえ、よい1日でした。
(田中記)
注1:川底から河岸上部までの満水推移は、14~15mです。当日は水位が低く、私たちが釣った深さは3m~5m位だったでしょう。
注2:穂先脈釣り・・浮子をつけずに、竿の穂先の動きを見て魚の喰いつきタイミングを判断するもの。
外つけ通しオモリ・・道糸にオモリを固定しないでフリーにする方法。