オーストラリアにて

 四十数年前、長女が交換学生としてメルボルンに留学していたことが縁で私の初めての海外旅行はオーストラリアでした。以来幾度かの渡豪、そして今回は過去の記憶を再確認する意味もあり首都キャンベラへ約700キロの長距離ドライブ旅行をしました。
  美しい山々に囲まれたキャンベラは、中心の湖を挟んで国会議事堂と戦争記念館が直線に向かい合って建てられています。館内にはオーストラリアが関わった戦争の記録が展示され、以前は屋外におかれていた「人間魚雷」が館内に移され、映像と共にリアルに演出されていました。
  日本の若者が乗った三艇がシドニー湾に攻め入り、結局二艇の乗組員四名は丁重に葬られましたが一艇はいまだに海中に沈んだままとのことです。この事件は市民を恐怖に陥れたにも関わらずその敬意に対しても感銘を受けました。  
  あの狭い空間の中で二十歳前後の若人が何を思ったのでしょうか。日本に関することも多く展示され、今まで私達の知らなかったこと知らされなかったことが何と多かったことかと改めて戦争の悲惨さを思い胸が締め付けられるような痛みを感じました。
帰路、広大な牧草地に黄色のタンポポの花畑がまるでパッチワークのように広がって私達の目を楽しませてくれました。平和だからこそこんな美しい世界をみることができるのだと。思い出深い旅行となりました。
     (三枝ヒロ子)

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