戦時中、軍の学校へ入学したとき、毎日日誌を書くこと、日誌は毛筆で書くことを命じられました。これが私の書に対する出発点です。長い間書道家といわれる著名な方に指導を受けています。二~三日に一度四0分くらい墨を摺ります。この間、心の安定と書に対する心構えが出来ます。摺った墨で書いた書は、墨の濃淡、カスレ、適度な滲みが出て奥深い書ができます。市販の墨汁で書くと奥行きがなく平坦で、あまり感心しません。朝の散歩の後、二~三時間筆をとります。
年の所為か、疲れることもあるので、午後は老人センターでカラオケを歌ったり風呂に入って気分転換をします。また折々に書の展示会を見たり、「書は人そのもの」といいますので歴史上の人物の書跡を見てその人物像に思いをはせます。八十五歳を転機に子供たちの意見を聞いて、娘と同居することになり、時間的余裕も出来て書を楽しむ時間も多くなり、余生に対する子供たちの配慮に感謝しつつ擱筆します。
(寺師則夫)
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