山との付合いは、中学生の夏に、父に連れられて富士登山したのが最初で、会社員時代の繁忙期のブランクはありましたが、かれこれ六十有余年になります。その間、日本の山々の登山行を繰り返していたのですが、古希を迎えようとする年頃の山仲間四人が集まり、集大成として、記念登山をしようと相談したところ、衆議一決したのが、アフリカの最高峰キリマンジャロ(スワヒリ語で「白い山」標高五八九五米)でした。それまで、ヒマラヤの四~五千米級の山々をトレッキングしておりましたので体力には自信がありましたが、六千米は初めてなので、若干不安はありました。
決行したのは五年前の二月で空路を乗り継ぎケニアのナイロビ空港に降り立ち、そこからマサイ族の集落の点在する陸路をタンザニアに向かいました。翌日、ふもとの町マランゲートで入山手続をし、ポーターを雇い入れ、愈々出発です。一泊目(二七二七米)、二泊目、三泊目(三七八十米、体調適応するため)四泊目(四七五十米)。そして夜半の十二時から、頂上に向けて登り始めます。あいにく天候不順でしたが、やっとの思いで頂にたどり着き、ほっとしたのが懐かしく思い出されます。七十歳と十五日目でした。この山のすばらしさは、頂上の氷河の神秘的な美しさであり、また単独峰に拘らず登頂に四日間も掛かる山容の雄大さ、そして漆黒の闇に宝石箱をぶちまけたような赤道直下の満天の星の輝きの美しさです。 帰路、ケニア国立公園で、サファリツアーを楽しんだのですが、その際に天空に泰然と浮かぶ冠雪のキリマンジャロ、「白い山」に再度感動したのでした。
(山田輝夫)
コメント