今から40年近く前のお話です。当時は会社で中南米の輸出部門に所属しており、頻繁に中南米の国に出張しておりました。それは、コロンビアの首都ボゴタに出張したときにおこりました。コロンビアとはレコード会社と思っている方もいらっしゃると思いますが、コーヒーは世界3位、宝石のエメラルドは世界一の産地で、またラテンアメリカの美人の三大国3C(チリ・コスタリカ・コロンビア)の中でも一番美人の多い国といわれる魅力あふれた国です。
ニューヨ-ク経由で夕方、ボゴタに到着し、なじみのビジネスホテルにチェックイン。夕食を取るため、パスポート・航空券・小銭をもって付近のレストランに出かけました。貴重品はサムソナイトのス-ツケ-スに鍵をかけてしまいました。まだ、日本のクレジットカードが海外ではどこででも使える時代ではなく、海外出張には、ドルのトラベラー-チェックもっていきました。トラベラ-チェックもス-ツケ-スに。夕食後、部屋に戻ると、スーツケースがありません。早速フロントに通報、しばらくすると警察が来て指紋などを採取していきました。到着したばかりで、まだ、仕事をしていません。お客さんとの打ち合わせもあります。下着もないお金もない、でも帰るわけにもいかない。それから1週間同じホテルに滞在し、無事仕事も終え帰国しました。
ホテルは、ホテルの管理の非を認め、アップグレードした別の部屋を無償提供してくれ、朝食までサ-ビスしてくれました。お客さんも同情してくれ、「泥棒はどこにでもいます。だからと言って、この国を嫌いにならないで!」と下着を差し入れしてくれました。おかげで交渉もスム-ズに行くという副作用もあり、コロンビアの人たちのやさしさに触れることになりました。
日本に帰ってから、トラベラー-チェックを発行した銀行から連絡があり、トラベラーチェックは事件の翌日に、アメリカのマイアミで換金されたとの報告を受け、盗難ということで、全額戻ってきました。保険も効いて実質の被害はほとんどありませんでしたが、この事件のお陰で、なんとなくコロンビアという国が身近になりました。その後、犯人が捕まったという話はありません。
高田明夫
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