ヴァイオリンとベートーヴェンを愛聴六十余年

 老後の楽しみ方は私の場合偶然にも六十年以上昔の中一で見出した。当時ど田舎に住み文化は皆無、あるのは山、川、海、空の自然美のみだった。或る日隣町でヴァイオリン(以下V)演奏会を初めて鑑賞した。途中迄は退屈だったが或る曲から段々と全身が其の旋律、音色に反応し電気が走り出した。一体如何したことか手に汗を握る。これがベートーヴェン(以下B)か、V曲かと脳裏に焼き付いてしまった。それ以降Vの艶やかで澄み切った響きとBの琴線に触れる苦悩や歓喜に満ちた曲を聴き続け早六十年以上経った。
 住居や仕事の移動と異なり趣味は一生物だ。それが一因かBの耳疾の如く難聴に陥り、一生音楽も聴けぬかと絶望もしたが三年掛け二度の手術で聴力が甦りBとVの愛聴が繋がった。
 この受動的趣味に加えて、更に悠友会活動に参加し会員との活動が増し、動静共に充実した毎日だ。今後も歓喜に向け高揚を長く続けたい。 
     (佐々木健志)

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